体内時計の「10秒」はどれくらいずれる? 時間の感覚のふしぎ
時計を見ずに10秒をつくると、たいていは少しずれます。この記事では、時間の感覚の性質と、ずれ方を左右するもの(数えるかどうか、注意、気持ちの高ぶりや体温)を、論文をもとにまとめます。ナカミドの体内時計テストの数字の見かたも書きます。
結論:ずれるのがふつう。ずれには「くせ」と「ばらつき」がある
- ねらう長さが長いほど、ずれの幅も大きくなります(スカラー性)。ただし、いつもぴったり比例するわけではありません。
- 好きな方法で数えながら12秒をつくった637人の平均は約10.2秒(目標の0.85倍)で、目標より短めでした。
- 頭の中で数えると、回ごとのばらつきは小さくなりやすい一方、数えるテンポ自体がずれていると、そのずれは残ります。
- ほかのことに気を取られている、気持ちが高ぶっている、体温が高いといった状態でも、時間の感じ方は変わります。
ここでいう「体内時計」は、1日のリズムではない
体内時計というと、朝型・夜型のような1日のリズムを思い浮かべるかもしれません。この記事で扱うのは、それとは別の、数秒から数分の長さを測る感覚です。研究では「インターバル・タイミング」と呼ばれます。
このしくみの説明として長く使われてきたのが、ペースメーカー(拍を出す係)とアキュムレーター(拍をためる係)の考え方です。頭の中で一定の拍が出ていて、たまった拍の量で長さを判断する、というモデルです。ただし近年はこの見方に疑問も出ていて、脳は時間をいくつもの神経細胞の集まりに分散したかたちで表している、という考え方も提案されています(Buhusi & Meck, 2005)。
長い時間ほど、ずれの幅も大きい(スカラー性)
1秒をつくるのと10秒をつくるのとでは、10秒のほうが秒数でのずれは大きくなります。このとき、ずれの幅(標準偏差)がねらう長さに比例する性質を「スカラー性」と呼びます。感覚の研究で知られる「ウェーバーの法則」を、時間に当てはめたものです(Hinton & Rao, 2004)。ギボン(John Gibbon)が動物の行動を説明するために1977年の論文で示した「スカラー期待理論」も、この性質を中心にしています。
比べるときには、ばらつきを平均で割った「変動係数」を使います。スカラー性が成り立つなら、長さが変わっても変動係数はほぼ同じになります。
変動係数 = ばらつき(標準偏差)÷ 平均
たとえば変動係数が0.1なら、1秒をねらったときのばらつきは約0.1秒、10秒なら約1秒です。
ただし、変動係数の大きさは条件でかなり変わります。68ミリ秒から16.7分までを調べた研究では、5人の参加者が、数えないよう数字を読み上げながら長さを再現したところ、変動係数の平均は0.35でした。ほぼ同じ範囲を扱った過去のデータでは0.1に近かったと、著者らは書いています。この研究では、長い時間ほど変動係数が少しずつ小さくなる傾向も見つかりました(Lewis & Miall, 2009)。スカラー性は多くの研究で確かめられていますが、合わない場面も報告されています(Wearden & Lejeune, 2008)。
実際どのくらいずれる? 数百人の研究から
18〜67歳の数百人に、スペースキーを押し続けて1・3・6・12・15秒をつくってもらった研究があります。答え合わせはなく、1つの長さにつき1回ずつでした(Bartholomew ほか, 2015)。
| 条件 | 分析した人数 | 12秒をねらったときの平均 | 3〜15秒の変動係数(人による差) |
|---|---|---|---|
| 好きな方法で数える | 637人 | 目標の0.85倍(約10.2秒) | 0.27〜0.31 |
| 数えないでつくる | 491人 | 目標の0.64倍(約7.7秒) | 0.36〜0.39 |
どちらの条件でも、どの長さでも、平均は目標より短くなりました。数えない条件のほうが短く、人による差も大きくなっています。
この研究は、数える条件をいつも先に行っていて、順番を入れ替えていません(著者らは、順番の影響はないとする過去の研究を挙げています)。数えない条件は「数えずにできた」と答えた人だけで分析しています。また、表の変動係数は参加者どうしの差で、1人の中での回ごとのばらつきとは別ものです。
頭の中で数えると、何が変わる?
「いち、に、さん…」と頭の中で数えると、ずれ方の性質そのものが変わることが分かっています。
ばらつきは小さくなりやすい
1〜4秒と2〜8秒で調べた研究では、数えると推定がより正確になり、ばらつきが小さくなり、スカラー性が崩れました(Rattat & Droit-Volet, 2012)。
8・16・24秒を再現してもらった研究では、数えても数えなくても平均の正確さは同じくらいでした。ただ、スカラー性が見られたのは数えないときだけでした。数えたときのばらつきは、1回数えるごとの小さなずれを足し合わせたものとして、うまく説明できました(Hinton & Rao, 2004)。
ただし、短い長さでは、数える効果に限りがあるようです。長さの違いを判断する課題で0.8秒と1.6秒を比べた研究では、1.6秒では数えることで成績がはっきり良くなりました。一方、0.8秒では、合図が音か光かなどによる成績の差が、数えても残りました(Grondin ほか, 2004)。
くせ(テンポのずれ)は残る
一方、10〜90秒をつくってもらった研究では、数えても正確さ(目標とのずれの大きさ)は良くなりませんでした。良くなったのは、ばらつきのほうです。60秒と90秒では、数えたほうが、数えないときより長めにつくる傾向も出ました(Thönes & Hecht, 2017)。
つまり、数えると「毎回そろう」けれど、「10秒ぴったり」になるとは限りません。数えるテンポそのものが速すぎたり遅すぎたりすると、そのずれは数えた回数ぶん積み重なる、と考えると分かりやすいでしょう。
数えると正確さも上がったという研究と、上がらなかったという研究があります。長さや課題の形が違うので、条件で結果が変わると考えるのがよさそうです。
気が散ると、時間を長くつくりやすい
時間の感覚は、注意をどれだけ時間に向けているかでも変わります。117の実験をまとめた分析では、あとで長さを聞かれると前もって知っているとき、頭を使う作業が重いほど感じる長さは短くなり、ばらつきは大きくなりました。反対に、前もって知らされず、あとから思い出して答えるときは、作業が重いほど長く感じていました(Block ほか, 2010)。
体内時計テストは、10秒をつくると分かって始めるので、前者の形です。注意を重く見るモデルで考えると、時間から注意がそれているあいだは拍がたまりにくく、「まだ10秒たっていない」と感じて押すのが遅れます。実際に、暗算をしながら時間をつくってもらった実験では、長くつくりすぎ、ずれもばらつきも大きくなりました(Thönes & Hecht, 2017)。
気持ちの高ぶりや体温でも変わる
ペースメーカーの考え方では、体や気持ちが高ぶって拍が速まると、同じ時間でも拍がたくさんたまり、長く感じます。10秒をつくるなら、早めに押すことになります。
- カチカチという音(多くは5秒間、1秒に5回または25回)を聞かせてから長さを判断したりつくったりしてもらった4つの実験では、拍の速さが平均で約10%上がったと考えるとおおむね合う結果が出ました(Penton-Voak ほか, 1996)。
- 1927〜1993年の研究をまとめた総説では、ほとんどの場合、体温が上がると主観的な時間の進み方も速くなっていました。著者らは、体の高ぶり(覚醒)の変化で説明するのが、おそらくいちばん有力だとしています(Wearden & Penton-Voak, 1995)。
- 感情についての総説は、「楽しいと時間が早く過ぎ、退屈だと長い」という感覚を、気持ちの高ぶりと快・不快が組み合わさって注意の向け方や時計の速さが変わるため、と説明しています(Droit-Volet & Meck, 2007)。
この考え方なら、気持ちが高ぶっているときは早めに押しやすくなりそうです。ただ、ふだんのテストでどのくらい効くかまでは、これらの研究からは分かりません。
体内時計テストの数字の見かた
ナカミドの体内時計テストは、10秒をつくる課題を5回くり返します。計測中は経過時間などの手がかりを出さず、答え合わせは5回が終わってからです。数字は、各回の「10秒とのずれ」の大きさ(早い・遅いは問わない)の平均で、ミリ秒で出します。1回のずれは5秒で打ち止めにしています。
この数字には、くせ(毎回早め・毎回遅めといった偏り)と、ばらつき(回ごとの差)の両方が入っています。架空の例で比べてみます。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 5回の記録 | 9.2・9.5・9.1・9.8・9.4秒 | 8.6・11.4・9.9・10.8・9.3秒 |
| ずれの平均(テストの数字) | 600ms | 880ms |
| くせ | 平均0.6秒 早め | なし |
| ばらつき(標準偏差) | 約0.25秒 | 約1.0秒 |
Aさんは毎回そろっていますが、全体に早めです。数えるテンポを少しゆっくりにすると、数字が縮みそうです。Bさんは平均するとちょうど10秒ですが、回ごとの差が大きいタイプです。数え方を決めておくと、そろいやすくなりそうです。結果画面には、くせ・ばらつき・いちばん10秒に近かった回も出るので、どちらのタイプか見てみてください。
1.5〜6秒の長さを再現する小さな実験では、毎回「ねらいに近かったかどうか」だけを知らせたグループ(17人)は、知らせなかったグループ(19人)より、同じ長さをやり直したときに、ばらつきがより大きく縮みました。知らせなかったグループでも、やり直しの回は目標に近づいていました(Bader & Wiener, 2021)。何度か受けると数字が良くなることがあるので、友達と比べるなら1回目どうしがおすすめです。
よくある質問
頭の中で数えるのは、ずるいですか?
ずるくありません。体内時計テストでは、数えてもかまいません。ただ、数えるかどうかで結果の性質が変わるので、友達と比べるときは、数える・数えないをそろえると公平です。
毎回早めに押してしまうのはなぜですか?
珍しいことではありません。上で紹介した数百人の研究でも、平均は目標より短くなりました。数えるテンポが速い、気持ちが高ぶっているなどが考えられます。
ずれが大きいのは、何か問題がありますか?
このテストは遊びとしての目安で、医学的な検査ではありません。数字だけで体や心の状態は判断できません。ふだんの生活で時間の感覚に困ることが続くときは、医師などの専門家に相談してください。
自分の「10秒」を測ってみる
自分の10秒がどのくらいずれるのか、くせとばらつきのどちらが大きいのかは、体内時計テストで1分ちょっとで確かめられます。数字の出し方は、体内時計テストの計算のしかたにすべて書いています。「上位◯%」は、受けた人が100人に届いてから表示します。
参考にした資料
- Buhusi CV, Meck WH「What makes us tick? Functional and neural mechanisms of interval timing」Nature Reviews Neuroscience 6: 755–765(2005):Europe PMC
- Lewis PA, Miall RC「The precision of temporal judgement: milliseconds, many minutes, and beyond」Philosophical Transactions of the Royal Society B 364: 1897–1905(2009):PMC(全文)
- Wearden JH, Lejeune H「Scalar properties in human timing: conformity and violations」Quarterly Journal of Experimental Psychology 61: 569–587(2008):Europe PMC
- Wikipedia(英語版)「Scalar expectancy」:en.wikipedia.org
- Bartholomew AJ, Meck WH, Cirulli ET「Analysis of Genetic and Non-Genetic Factors Influencing Timing and Time Perception」PLoS One 10(12): e0143873(2015):PMC(全文)
- Hinton SC, Rao SM「"One-thousand one... one-thousand two...": Chronometric counting violates the scalar property in interval timing」Psychonomic Bulletin & Review 11: 24–30(2004):Europe PMC
- Rattat AC, Droit-Volet S「What is the best and easiest method of preventing counting in different temporal tasks?」Behavior Research Methods 44: 67–80(2012):Europe PMC
- Grondin S, Ouellet B, Roussel ME「Benefits and limits of explicit counting for discriminating temporal intervals」Canadian Journal of Experimental Psychology 58: 1–12(2004):Europe PMC
- Thönes S, Hecht H「Counting does not improve the accuracy of long time productions」Attention, Perception, & Psychophysics 79: 2576–2589(2017):Europe PMC
- Block RA, Hancock PA, Zakay D「How cognitive load affects duration judgments: A meta-analytic review」Acta Psychologica 134: 330–343(2010):Europe PMC
- Penton-Voak IS, Edwards H, Percival A, Wearden JH「Speeding up an internal clock in humans? Effects of click trains on subjective duration」Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes 22: 307–320(1996):Europe PMC
- Wearden JH, Penton-Voak IS「Feeling the heat: body temperature and the rate of subjective time, revisited」Quarterly Journal of Experimental Psychology B 48: 129–141(1995):Europe PMC
- Droit-Volet S, Meck WH「How emotions colour our perception of time」Trends in Cognitive Sciences 11: 504–513(2007):Europe PMC
- Bader F, Wiener M「Awareness of errors and feedback in human time estimation」Learning & Memory 28(5): 171–177(2021):PMC(全文)
「PMC(全文)」の3本は本文を、「Europe PMC」の10本は論文の要旨(アブストラクト)を、Wikipedia は記事を読んで書いています。要旨にない細かい条件までは確かめられていないため、この10本については要旨に書かれている範囲だけを使いました。
この記事について
この記事は、ナカミドを運営するくぁくぁが、生成AI(Anthropic の Claude)の下書きの手伝いを受けて書き、参考にした資料を開いて内容を確かめました。心理学などの専門家の監修は受けていません。最終確認日は2026年9月28日です。作り方は編集方針に書いています。まちがいや古くなった情報に気づいたときは、お問い合わせから教えてください。確かめて直します。